ワロンは、これに関連して次のように述べています。
・融即(ゆうそく)というのは〈中略〉自他が一応分化していることを前提にして、自が他に参与(participation)することを意味する。[ワロン1985]
母親の手を握り同時にそれに握られる。また母親に小さな体をいっぱい使ってしがみつく一方で、その大きな両腕に包まれる。融即の観念はまるで胎内へ還ろうとする衝動がそうさせているかのごとく根強く私たちの心に宿っています。これが、やがて他者の期待に応えたいという欲求になっていくのです。そして、さらに他者と同じものを見て同じ事を思うといった意識の同一化を誘うと考えます。ワロンは、「融即や同一化は、これまで人びとの築いてきた思想や信仰、文明のある体系のなかで、きわめて重要な機能を果たしてきた」[同書]と指摘しています。(第3講 融即の観念より抜粋)
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